(1)OTRSの多彩な動作分析機能
原材料が工場に運ばれ製品になるまでには加工・検査・運搬・貯蔵といった工程があります。材料を曲げたり、部品を取り付けたりする加工工程の作業はそれ自体価値を生み出す作業ですが、材料が来るのを待っている時間や工具を探す動きは価値を生まないムダな動きです。これらは工程を見直したり、工具の置き場所を変えるだけで取り除くことができ、結果として作業速度がアップします。
人の作業には必ずムダが隠れています。しかし、現場をつぶさに観察してムダを見つけ出すには時間がかかり、正確性という点でも限界があります。一方、映像であれば繰り返し再生できるので、高い精度でムダを発見し、取り除くことができるだけでなく、同時に時間計測もできます。OTRSは短い時間で動作を分析し、ムダを取り除くことができるツールです。
スムーズに分析をすすめる多彩な機能
OTRS10では分析をスムーズに行うさまざまな工夫がなされています。
要素分割
動作分析はまず作業動作を要素ごとに分割することからはじめます。要素分割はマウス操作だけで再生画面からもタイムラインからもできます。動画は再生・逆再生・コマ送りや、ズーム拡大・全下面表示ができ、繰り返し何度でも確認できます。分割した結果は直ちに要素表として表示されます。また、一度分割した要素を選択し、結合ボタンをクリックするだけで簡単に結合することができるので、何度でもやり直すことができます。
要素名の入力と種別設定
要素名は予め登録されている単語を選択するだけで入力できます。
改善のポイントになるような動きについては要素ごとにテロップ、リンク、ナレーションを登録できます。テロップの場合、重要度に応じて色分けできます。
多彩な再生機能
OTRSは分析状況を再現しながら再生できるほか、ムダと計測外の要素を省いて再生することができます。他にも、選択されている要素のみを再生できるリピート再生や要素の終点で再生が停止するステップ再生機能があります。再生速度は0.03 ~ 3.0 倍(分析時は8倍)まで可変可能です。レイティング値を変更して再生したり、再生速度を調整しながら再生できます。
標準作業時間
OTRSによる作業分析の目的は業務を改善して原価低減を図り、生産性を高めることです。そのための最初のステップが作業の標準化と標準作業時間の策定です。
なぜ標準作業時間が必要なのでしょうか?
標準作業時間が分からなければ生産日程、コスト管理、人員配置など生産計画を立てられません。1つの製品の完成までにどのくらいの時間と労力が必要なのか、それが分からなければ納期、賃金、引いては原価が分からなくなってしまいます。
グローバル化によって世界中の企業と競合しなければならない時代です。とりわけ輸出製品は原材料の高騰や為替に大きく影響されます。生産コストをできるだけ抑えることがすべての企業に求められています。一方で、ジャパンブランドといわれる品質の高さも維持していかなければなりません。また、需要があるのに製品を供給できないということになれば死活問題になります。つまり、QCD(品質・価格・納期)を高めていくことが国際競争を勝ち抜くためには欠かせなくなっています。そのために継続的な改善活動が必要です。
OTRSでは作業動作を要素分割後、各要素からムダな作業を取り除き、標準作業を策定できます。この標準作業がそのまま標準作業時間になる訳ではありません。レイティングにより、作業速度を評価する必要があります。その結果、規則的な作業を行うのに必要な標準時間 = 正味時間が算出できます。さらに、誰でもムリなくできる標準作業時間は、この正味時間に余裕時間を加えたものです。余裕時間はどんな人にも必要なトイレや水分補給、作業に入る前に必要な準備時間、報告書などの事務作業時間の合計です。
OTRSは動作分析の一連の流れの中で正味時間、余裕時間の設定を同時に行うことができます。